エンジニアがコミュニティに参加するモチベーションとは──JAZUG女子部立ち上げを例に

皆さま、はじめまして。
このたび、ご縁あってGeekOutにてコラムを書かせていただくことになりました、株式会社エヌ・ティ・ティ・データ(以下、NTTデータと称します)の安東沙織と申します。

NTTデータでは、官公庁や自治体、金融機関、さまざまな業種の企業へ向けた情報システムの構築を行っており、組織構成も、お客さまの業種に応じた体系になっています。その中で私は、新卒入社時からシステムエンジニアとして働き始めました。特定のお客さま専属ではなく、研究開発やソリューション提供を行う全社横断的な組織に所属し、今春で10年目となります。

そのかたわら、Japan Azure User Group(JAZUG)女子部の部長、JAZUGのコアメンバー、Microsoft MVP for Microsoft Azureとして活動をしています。

今回のコラムでは、会社を超えた技術系のコミュニティに参加し、立ち上げにまで至った経緯やコミュニティで目指す方向について、少しお話をさせていただきます。皆さまが「なんか面白そうだから、ちょっと今度どこかのコミュニティに参加してみようかなぁ」と思っていただけるようなきっかけが、少しでも作れれば幸いです!

コミュニティとの出会い。最初は気後れしたけれど……

まず、私がこのようなコミュニティになぜ参加することになったのか、というところからお話ししたいと思います。

私が新卒で配属されたのは、マイクロソフト社製品を中心に、シンクライアント・VDI(Virtual Desktop Infrastructure)などの仮想化技術を活用して、お客さまへシステムを提供する部署でした。

2009年秋ごろに研究開発(R&D)業務の一貫として与えられた最初の仕事が、「Windows Azure Platform(2014年3月に、現在の名称である「Microsoft Azure」に変更されました。以下、Azureと称します)を調査し、社内レポートとしてまとめること」でした。現在では、AWS(Amazon Web Services)やAzure、GCP(Google Cloud Platform)などといったパプリッククラウドが世の中に要素技術として浸透しています。しかし2009年当時、Azureはまだ正式サービスリリース前。公開情報も英語のホワイトペーパーのみで手がかりが少なく、初めての仕事ということも相まって、「一体、何をどう調べたらいいのだろう……」という状況でした。

そんな時、Azureをテーマにした勉強会なるものが開催されているのを発見し、まさにわらにもすがる思いで参加してみた……というのが、私と勉強会との最初の出会いでした。

当日、意気揚々と勉強会会場に向かうと、見渡す限り男性のみっ! しかもキャラ濃いめっ! 内輪感半端ないっ! 10年間女子校育ち、ほぼ女性だけ(男性といえば教授のおじいちゃまたち)に囲まれて育った私には、かなり衝撃的な光景でした。知っている人が誰かいるわけでもなく、なんとなく他の参加者の方からも好奇の目で見られている気がして(いま振り返れば完全にただの勘違いだったわけですが……)、セッションが終わると懇親会にも参加せず、そろりと帰宅してしまいました。その後、他の勉強会が開催されていても、なんとなく気後れしてしまい、約半年間コミュニティとは疎遠となっていました。

再びコミュニティと出会うことになったのは、2010年の夏。マイクロソフトのカンファレンス「Microsoft Tech・Ed Japan 2010」のサイドセッションとして設けられた「JAZUG(Japan Azure User Group)のキックオフパーティー」でした。「横浜港クルージングの船上パーティーがあるからみんなで行かない?」と部署の先輩にお誘いをいただきました。ただ、船に乗るためにはLT(ライトニングトーク。カンファレンスやフォーラムなどで行われる、1~5分間程度の持ち時間で行う短いプレゼンテーションのこと)への登壇が必須だったのです。

顔面蒼白で「LTってなに? なにを話すところなの?」と思いながらも、『初心者がハマったWindows Azureの基礎の基礎』と題したLTを、しどろもどろになりつつも、マイクロソフト界隈コミュニティの大重鎮やマイクロソフト社員の皆さんからの温かい目で見守られながら、なんとか終えることができました。

その日の帰り際、マイクロソフトの社員の方から「クラウドは今までのインフラの概念を覆す。インターネットさえつながる環境にいれば、いつでもどこでも普段使う環境に触れることができる。家庭や育児に追われる女性にとって、クラウドはとても最適な環境になり得る。もしよければAzureの女性コミュニティをやってみませんか?」とお声がけいただきました。「私にご協力できることなら!」と、二つ返事でお引き受けしました。

これが、コミュニティへの参加自体もほぼ初心者の私がコミュニティに参加し、加えて突然コミュニティオーナーになったきっかけです。

2010年8月、初めてLTを行った船上パーティーの様子
2010年8月、初めてLTを行った船上パーティーの様子

女性対象のコミュニティ「JAZUG女子部」は、オーナーひとりの地道な活動からスタート

いざ「JAZUG女子部」を立ち上げたら順風満帆だったか、というと、そんなことは全くありませんでした。

女子部とはいっても、コミュニティを立ち上げたらすぐに女性が集まってくれるわけでもありません。渋谷のクラブを貸し切った深夜のライブストリーミングイベントやら、パブリッククラウドの中の人(社員)たちが自社の製品を熱く語るイベント「クラウドごった煮」やらで、いい意味でキャラが濃いというよりもクセがすごい、個性豊かなそうそうたる顔ぶれの諸先輩方に囲まれながら、「Azureを勉強するだけではなく、IT業界で女性同士の横のつながりを作っていけるようなコミュニティがやりたくて、JAZUG女子部っていう活動をしています! でも、まだ部員1名です!」というネタのような登壇をしながら、ひとり地道に布教活動をしていました。

ライブストリーミングイベントの様子
ライブストリーミングイベントの様子

そうこうしていたら、2011年の年明けすぐの頃に、AWSのユーザーグループ「JAWS」のクラウド女子会をリードされていた方から「一緒に勉強会をやってみませんか」とお誘いをいただきました。「おもしろそうだからぜひやらせてください!」とお返事して、2011年4月末に実現したのが「JAZUG女子部×JAWS-UGクラウド女子会共催『クラウドってそもそもなんなの?』」でした。

JAZUG女子部×JAWS-UGクラウド女子会共催「クラウドってそもそもなんなの?」の様子
JAZUG女子部×JAWS-UGクラウド女子会共催「クラウドってそもそもなんなの?」の様子

ご参加いただいた皆さんや登壇者、スタッフを含めると、マイクロソフト社のセミナールームに100名近い女性が集まってくださって、非常に圧巻でした。AzureとAWSのエバンジェリストの方々にはセッションへの参加だけでなく、その場にいる皆さんからの素朴な質問にも回答していただくなど、いま振り返ってみてもだいぶ豪華な勉強会だったと思います。

この勉強会開催をきっかけにして、徐々にJAZUG女子部へ参加してくださる女性たちも増え、おかげさまで、2018年1月時点で約100名弱の女性にご参加いただいています。

振り返ると、2011〜2012年頃は“IT女子部ブーム”だったのか、非常にたくさんの女性向け技術コミュニティが発足していたイメージがあります。そういった女性コミュニティでの「女性ひとりでは勉強会に参加しにくい」という声をくんで、性別を問わない勉強会やイベントでも「女子優先登録枠」が設定されるなど、既存のコミュニティにおいても女性参加者を優遇する場面が増えたかな、と感じています。

「知り合いがいなくて不安」そんな時は、隣に座った人に話しかけてみてはどうでしょう

ただ、正直なところ、コミュニティ内で「女性だからもてはやされる」「女性だけが優遇される」というのも違う気がしています。コミュニティに入っていきづらいのは、性別の壁も多少はあれど、私が当初コミュニティへ参加した時に感じたような「内輪感」や「知り合いがいないことへの不安」の影響が大きいのでは?と最近は感じています。

そういった意図もあって、JAZUG女子部の場合、Facebookグループでは「女性のみ、承認制」とさせていただいていますが、オフラインでの勉強会は性別を問わず実施しています。どちらかといえばクラウド初心者、Azure初心者の方に向けて、なるべく広く、さまざまな方にAzureを知っていただけるように、という方針にシフトしています。

JAZUG女子部を踏み台にしてもらって、「コミュニティってなんか面白いかも。次はJAZUG本体のイベントや、違うコミュニティの勉強会に行ってみようかな」と思ってもらえるような、きっかけ作りのお手伝いができたらと思っています。

昔の話ですが、会社の飲み会でコミュニティ活動の話をした際に、とある女性の先輩に「コミュニティ活動ってオタクの人の集まりでしょ? しかも休みの日に勉強しなきゃいけないんでしょ? 私だったら土日の休みをつぶしてまで参加するなんて考えられない」と言われたことがあります。信頼していた先輩だったこともあり、そう言われた時は自分を否定されているようで非常にショックでした。ただ、コミュニティに参加したことがない方の中には、コミュニティ活動がそのように見えている方もいるのだな、ということも同時に感じました。

他にも「JAZUG女子部に参加させるから、会社の宣伝とプレゼンテーションができるように新人を育成してほしい」「◯◯女子部に所属しているのに、JAZUG女子部に参加させるなんて裏切り行為だ」など、挙げればキリがないほどさまざまなコメントを頂戴してきました。約7年ほどコミュニティというものに携わらせていただいていますが、コミュニティに対して何を期待するかは本当に三者三様なんだなぁ……と強く感じます。

あくまでも私の場合ですが、もちろんAzureが好きなのは大前提として(笑)、人とのつながりがコミュニティ運営の一番のモチベーションになっているかなと考えています。

現在は幸いにもパブリッククラウドに関する仕事に携われているのですが、最初に紹介した業務の社内レポートでAzureに関わった後は、Azureもパブリッククラウドも全く関係のない業務を5年間くらい行っていました。それでもコミュニティ活動を続けていたのは、当時はNTTデータで女性エンジニアのロールモデルとなる方、特に少し上の世代でロールモデルにさせていただけるような方が少なかったこともあり、「他社で活躍されている女性エンジニアの方々とコミュニティでお話しできて楽しい!」と感じたことが大きかったように思います。

JAZUGで開催したイベントの様子
JAZUGで開催したイベントの様子

また、これまでのコミュニティ活動を評価いただき、2014年4月から「Microsoft MVP アワード プログラム」において、Microsoft AzureのカテゴリーでMicrosoft MVPを受賞しています。

Saori Ando (Saori Ando)

それによって一段と、普段はなかなかお会いできない方にお会いする機会や、大勢の方の前でお話しする機会も増えました。そういうところもコミュニティ活動のモチベーションになっているのかな、と感じています。

少しだけ補足させていただくと、Microsoft MVPとは、マイクロソフトの製品やテクノロジーに関する豊富な知識と経験を持ち、オンラインまたはオフラインのコミュニティやメディアなどを通じて、その優れた能力を幅広いユーザーと世界的に共有している個人に対し、マイクロソフトが表彰する制度です。

特に、マイクロソフト米国本社で年1回開催されるMVP限定イベント「Microsoft MVP Global Summit」は、マイクロソフトの偉い人とひょっこり会えたり、日本でのニーズを直接製品開発チームにフィードバックできる機会があったりします。他国・他のカテゴリー受賞者・同じカテゴリーでも普段は日本各地に散らばっていてなかなか会えない皆さんに会えるのがとても楽しく、とても貴重な時間だと思っています。

Microsoft MVP Global Summitでの様子
Microsoft MVP Global Summitでの様子

さて、ここまでコミュニティに参加した経緯、コミュニティオーナーになってからのお話を書かせていただきました。コミュニティというと、本当に人によって抱くイメージが異なると思います。ですが、本コラムをきっかけに、少しでも「コミュニティに参加してみるのも楽しそうかも?」と思っていただければ幸いです。

もし興味あるコミュニティの中に誰も知っている人がいなくて気まずい、コミュニティで登壇している人は知識も深くて、自分では会話が成り立たないかも……と思う方がいらっしゃれば、ぜひ隣に座った方に声をかけてみてはいかがでしょうか。もしかしたらその人もコミュニティ初参加かもしれませんし、もしかしたらそのコミュニティの大重鎮で、いろんな人を紹介してもらえるかもしれません。

今は、非常にたくさんのコミュニティがそれぞれ活動しています。ぜひITに限らず、興味のあるコミュニティがあれば一度参加してみてはいかがでしょうか。そして願わくばJAZUGやJAZUG女子部にも足を運んでいただき、本コラムを読んでくださった皆さまとお目にかかる機会があれば、とてもうれしいです。

執筆者プロフィール

安東沙織(あんどう・さおり)

安東沙織

株式会社NTTデータ データセンタ&クラウドサービス事業部に所属。Japan Azure User Group(JAZUG)女子部の部長、JAZUGのコアメンバー、Microsoft MVP for Microsoft Azureとして、Azureを中心に、クラウドに関連するテーマで広く活動している。