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「うちの会社の魅力を広く知ってもらうにはどうすればいいですか?」── LINEの櫛井優介氏に聞く「技術広報」という仕事

自社の技術面での強みや、そこで働くエンジニアたちの取り組みを社内外に発信する「技術広報」や「エバンジェリスト」の役割は、テック系企業にとって、ビジネス面や人材獲得の面で大きな意味を持つようになってきています。そこで成果を生み出すための具体的な取り組みは、どのように行えばいいのでしょうか。

現在、組織として技術広報の取り組みを本格的に進めようとしているのがLINE株式会社です。同社は、2017年12月に「Developer Relationsチーム」を設立。技術イベントの開催や参加、ブログ、外部メディア取材などを通じて、さまざまな形での情報発信を行っています。

このDeveloper Relationsチームで「Culture Evangelist」として活動されている櫛井優介さんに、LINEでの「技術広報」に対する考え方や、エバンジェリストとしての活動について伺いました。

 

LINE株式会社 Developer Relationsチーム Culture Evangelist 櫛井優介さん
LINE株式会社 Developer Relationsチーム Culture Evangelist 櫛井優介さん

 

ブログでの情報発信が「人材」の育成や獲得を促進

── 櫛井さんが「技術広報」や「エバンジェリスト」としての活動を始められた経緯についてお聞かせいただけますか。

櫛井 2004年にライブドア(当時)に入社したことが大きなきっかけです。当時はWebディレクターとして、フィーチャーフォン(ガラケー)向けのサービスなどを担当していたのですが、入社数年後にいわゆる「ライブドア事件」があり、社員もクライアントも大きく減るピンチが訪れます。

ただ、そんな中でも仕事はそれなりにあって、売上自体は悪くない状況が続いていたんです。自分としても、ライブドアでの仕事は面白いと感じていましたし、技術力も依然として高い会社でしたので、そうした逆境の中でも、もっと多くの人にディレクターとして入社してもらいたいと思っていました。

そのための情報発信として始めたのが「ディレクターブログ(後の「LINE Corporation ディレクターブログ」。2013年12月に更新終了)です。この頃から、どちらかというとサービスを作るよりも、現場スタッフやエンジニアの育成に携わりたいという思いが強くなっていきました。

── 「ディレクターブログ」は、当初から社外向けの情報発信に加えて、社内スタッフの育成という役割も担っていたのでしょうか。

櫛井 あくまで結果論になるのですが、「ブログ」で社外に向けて自分たちの知識を公開する形にしたことで、公開前に不確かな部分を調べて補強したり、間違いがないかを検証したりといったプロセスが必要でした。それを続けることによってスタッフのスキルが向上した側面はあると思います。

例えば「Google AdSenseのクリック領域をうまくカスタマイズするとCTR(クリック率)がこれだけ上がる」というテクニック紹介記事は、結構人気が出ました。当時、ディレクター視点で開発に関するノウハウを発信している会社は他になく、社外の方にも「技術的なレベルが高い会社」「ユニークな会社」というイメージを持っていただけるようになりました。
それをきっかけに高いスキルを持った方が入社してくれることも多く、とても良いスパイラルが生まれるようになったんです。

その頃から「エバンジェリスト」という肩書を使うようになりました。当時は「自社製品」に関するエバンジェリストは他社にもいたものの、「会社」そのものの情報発信を行うエバンジェリストは珍しかった。とりあえず名乗ってから、何をやるべきか考えていった感じです(笑)。

── その後、ライブドアは買収されて、会社名もいくつかの変遷を経て「LINE」になりました。

櫛井 2010年の買収で、ライブドアは「NHN Japan」になりました。そのタイミングで一度、やっていることの実態に肩書を合わせようということで、肩書を「技術広報」に変更したんです。社名が「LINE」になったのは2013年ですが、2018年3月から、改めて「Culture Evangelist」を名乗り、LINEのエンジニア文化を伝えるための活動をしています。

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「情報発信」から生まれる良いサイクルを回していく

── 櫛井さんが所属している「Developer Relationsチーム」のミッションはどのようなものなのでしょうか。

櫛井 Developer Relationsチームは、2016年8月に設立された仮組織を継承する形で、2017年12月に新たに作られ、2018年3月からはCTO直属の組織になっています。目的はブランディング、採用、各種APIの普及です。チームが担っている役割は大きく分けて2つあります。

1つ目が「社外向けの情報発信」。LINEという会社やLINEが持っている技術、そこで働いているエンジニアについて、社外の方に知ってもらうための活動です。オウンドメディアでの情報発信に加え、技術イベントの企画運営やスポンサードなども含まれます。

2つ目に「社内向けの情報発信」。社外で得た情報や刺激を社内に還元して、LINEをエンジニアにとってより働きやすい環境にしていく取り組みです。組織が大きくなっている現在、こうした取り組みの重要性も増しています。

これらをうまく連携させて、良いサイクルを回し続けることがチームのミッションになっています。これまで、さまざまな担当者が個別にやっていた重要な取り組みを、組織として推進していく体制が出来上がってきています。

── LINEのエバンジェリストとして情報発信をする中で、特に今の課題と感じていることはありますか。

櫛井 エンジニアがグローバル規模で成長したことで、「LINEのエンジニアはこういう人たちです」と一言では言い表せない状況になっているというのが今の課題、というより、悩みのタネでしょうか。

ただ、逆に捉えれば、さまざまな背景を持った人、いろいろなタイプのエンジニアが一緒に仕事をしているLINEは、懐の深い会社であるとも言えます。少数のスターエンジニアに頼りっきりになる組織ではなく、多様な強みを持つ人が共に働き、変化をし続ける「チームとしてのダイナミズム」を伝えていきたいと最近では考えるようになりました。

あと、私自身が個人的に心がけているのは「自分が面白いと感じていることを発信し続ける」ということですね。

── その動機は?

櫛井 どんな会社でも同じだと思いますが、社内には面白い人がいっぱいいるんです。でも、その人自身は、外に向けて情報発信をしたり、イベントで講演をしたりといったことに対して遠慮がちだったりします。

私としては、そうした人に「情報を外に出す意味」や「外のイベントに出席する意味」を見いだしてもらうことが重要で、そのためにも自分が面白いと思ったことをどんどん発信して、他の人にも興味を持ってもらいたい。これまでの経験からも、この方針は間違っていないと思っています。

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── これまで「技術広報」「エバンジェリスト」としてお仕事をされていて、印象に残っているエピソードはありますか。

櫛井 ひとつ挙げるなら、2016年の自社イベント「LINE Developer Day 2016」(2016年9月26日、渋谷ヒカリエ9F ヒカリエホールにて開催)です。私は企画運営を担当しました。

このイベントで、同年3月11日に起きたLINEの大規模障害についての情報を取り上げようという話が持ち上がりました。サーバー側の不具合で2時間近くサービスが止まるトラブルだったのですが、その原因に関するデマがネットで飛び交うなど、悪い意味で非常に話題になってしまっていました。

サービス側でどのようなことが起こっていたのかについては、総務省にレポートを提出するなど、然るべき報告をしています。そして、社外のエンジニアに対しても「実際に起きていたことを伝えるべきなのではないか」と、担当者にイベントへの登壇を依頼することになりました。

── それは企業としてはかなり大胆な取り組みですよね。

櫛井 エンジニアの立場として、障害を引き起こしたミスについては、あまり話したくない……という気持ちもあると思います。でも、障害そのものはもとより、その対処プロセスなどは、他のサービスを運営している企業やエンジニアにとっても絶対に役に立つ情報になるはずです。その意義を伝えて担当者に登壇してもらった結果、多方面から大きな反響がありました。

「業界にとって有益な情報はためらわず公開、発信していく」というのは、ディレクターブログを始めた当時からの方針でもあるのですが、それがより大きな反響につながったという意味でも思い出深いイベントですね。

── LINEでは「技術広報」に関する取り組みの成果を測るにあたって、何らかのKPIを設定していますか。

櫛井 はい。活動の成果を「数値化」していくことは非常に重要だと考えています。

具体的には、LINEが主催・登壇したイベントで、内容の満足度に関するアンケートをとって集計したり、LINEという会社そのものの認知度や「技術力が高い会社」としての認知度を定量的に計るといったことをやっています。また、ブログやSNSのページビュー、フォロワー数などから、影響度を算出するような試みも続けています。

同じチームの他のメンバーは、LINEが開発・公開するAPIやSDKの普及活動をしているのですが、その利用数なども指標として活用しています。エバンジェリストとしては、それらに対する社外の評判を開発者に伝えて、改善のヒントにしてもらうこともしています。

いずれにしても定期的に何らかの「数値」を出し、その推移から得られる知見をサービスや運営の改善につなげていく取り組みは必須だと考えています。

コミュニティには「熱狂」しながら参加する

── 櫛井さんは、現在、LINE主催のWebサービス高速化コンテスト「ISUCON」や、過去には「JPA(Japan Perl Association)」の事務局として「YAPC::Asia Tokyo」の運営などに関わるなど、エンジニアコミュニティの活動に対して精力的な印象があります。こうしたイベント運営には、どのような意義を感じていますか。

櫛井 どのイベントについても、もちろん仕事の一部として関わってきたのですが、自分が参加することでコミュニティを盛り上げ、世の中のエンジニアにより良いインパクトを与えていきたいという気持ちは変わらず持っていますね。

── 企業としてコミュニティに関わる際の「心構え」のようなものはあるのでしょうか。

櫛井 「企業色を出し過ぎない」というのは重要でしょうね。それに名前を前面に出すよりも、「実はアレを主催しているのはあの企業らしいよ」と噂されるくらいが、カッコイイ気がしませんか(笑)。

また、短期的な成果を目的にコミュニティに参加しようとしても、あまり長続きはしないでしょう。参加することで、新たな「気付き」を得たり、「自分に足りないもの」に出会えたりするのが、コミュニティに参加する醍醐味です。

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櫛井 だからこそ運営に関わる側も、そのコミュニティが好きで、熱狂していることが大切。そうした姿勢が、他の参加者にも「このコミュニティに貢献したい」と思ってもらうことにつながっていくのだと思います。

私が所属していたライブドアは、もともとOSS(オープンソースソフトウェア)でサービスを作り、世の中にインパクトを与えるということをやっていたので、個人的にもオープンソースには並々ならぬ思い入れがあります。ですから、そうした文化やコミュニティに対して何か貢献できることをしたいという思いは自分自身としても強いですね。

発信した情報で「行動を起こさせる」ことが最終目標

── 「自社の技術的な強みについて、社外へ発信していく」ことの重要性を感じつつも、何から始めたらいいのか分からないと考えている方に向けて、何かアドバイスはありますか。

櫛井 とにかく「情報を発信」しないことには何も始まらないです。最初は「自分たちのため」と考えて、備忘録のような感覚でブログを始めるというのでもいいと思います。また「自分たちがやりたい」形であることも大切です。そうでなければ長く続けることはできません。「まずは始めて、それを続けていく」ことが情報発信の第一歩です。

── 櫛井さんが言っていた「面白いと感じていることを発信し続ける」ですね。

櫛井 また、私が最近「これがエバンジェリストの役割だ」と感じていることに、「人に行動を起こさせる」があります。立場上、社外のイベントで話をさせていただく機会もあるのですが、単に情報を発信して知ってもらうだけでは意味がなく、その情報を聞いた人に「実際にアクションを起こしてもらう」のが最終的な目標であるべきです。プレゼンテーションやトークのスキルなどは、エバンジェリストの本質的価値ではありません。

これまでLINEという会社に興味がなかったり、よく知らなかったりという人でも、つい「LINEっていい会社だよね」とSNSなどで言ってしまいたくなるような、そうした行動を促すような活動ができたらと思っています。

企業としても、日本やアジアのエンジニアリングの世界で常に先頭を走りたいという気持ちを持っています。そこで働いているわれわれが、どんな環境にあるのかを発信することによって、「この会社でチャレンジしてみたい!」と思うエンジニアの方々が増えてくれればうれしいですね。

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櫛井 優介(くしい・ゆうすけ)(LINE株式会社 Culture Evangelist)
Developer Relations Teamで技術系イベントやエンジニアBlogなどを担当。LINEのエンジニア文化を広め伝えています。スタートレックとお寿司が好き。

担当Blog:LINE Engineering Blog
Twitter:@941

 

(取材・構成:柴田克己、編集:北内彰一)

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