GeekOut×DATUM STUDIO「AI時代におけるエンジニアの生存戦略」 Developers Summit 2018 Summer 登壇レポート

猛暑が続く2018年7月27日(金)。多くの技術者が集うDevelopers Summit 2018 Summerにて、DATUM STUDIO株式会社 CTO安部 晃生氏とGeekOutが共同でトークセッションに登壇しました。

テーマは、「AI時代におけるエンジニアの生存戦略」
AI時代の到来にあたり、どういった人材が今後エンジニアとして活躍していけるのか?どういった知識を身につけておくのが良いのか?AIを用いたデータ活用コンサルティングに特化した企業の現場の声を交えつつ、当日の様子をレポートいたします。

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まずは、パソナキャリアで機械学習やAIに携わる方の転職サポートを担当していた経験もあるマーケティングチームの高坂より、現在の転職市場におけるAI関連職種の市況感について語りました。

AI関連職種は、大企業からベンチャー企業、そして事業会社からWeb系コンサル、SIerと事業規模・業種を問わず需要が増えている現状です。そんな中で現状の課題点は、「人材育成の加速化」。不足している人材を補填するには、どこかから人を採用することを考えるのみならず、人を育て、活躍できる人材にしていくという視点も必要であると話しました。

とは言え、「どういった人材を育成すれば活躍できる人材となるのかわからない」「今の自分にどういったスキルが身につけば未来のAI人材となり得るのかわからない」……そんな方も多くいるかと思います。
ここで、実際にAIビジネスに取り組んでいるDATUM STUDIO株式会社(以下、DATUM STUDIO) CTO安部 晃生氏へ話が移ります。

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「過去」に基づいた答えの提示、膨大な量の情報をスピードをもって処理できるのが現在のAI

DATUM STUDIOは、データ活用のコンサルティング企業。ビッグデータを持っている顧客企業がどのようにデータ活用をすればビジネスをより良くできるかを一緒に考え、優れたソリューションを提供しています。そんな同社が強みとしているのは、「ビジネス」「データサイエンス(統計)」「エンジニアリング」という3つの視点からのアプローチで、データを最大限に活用するところです。これらのスキルは、AIエンジニアの生存戦略を立てる上でも重要なポイントとのことでした。(詳しくは後述)

安部氏は、現代のAI(人工知能・機械学習)の主な活用方法について、下記3点を挙げられました。

1. 専門家の技能・知識の代わりを担ってもらう(例:販売実績に基づく中古商品販売価格の予測 など)
2. 集合知に基づく予測(例:SNSを用いたタレントパワー分析 など)
3. 異常状態の予測(例:工場でのセンサー情報に基づく異常の検知 など)

現状のAIは、過去の人間の活動・考え方を学習することで、新たなインプットに対する「答え」を集積されたデータに基づいて導き出します。機械の処理スピードは人間の脳よりも圧倒的速さを誇るため、人間が過去に判断してきたあらゆる事例、結果を学習させることで、人間以上の速度をもって、膨大な量の情報を処理することが可能です。

「ドラえもんのように自身で考えを導き出すには程遠いですし、その道の専門家が持つ「勘」といったものから答えを導き出すことはまだできませんが、量や速度を必要とする分野においては、人間よりもAIが圧倒的にアドバンテージを持っているのが現在の状況である」と、安部氏は述べました。

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それぞれの領域のプロを集めるだけではダメ。お互いを理解し合うことで生まれる化学反応とは?

ここからがいよいよ本題。AIエンジニアに必要な要件とは果たして何なのでしょうか。

この問いに対し、安部氏は、DATUM STUDIOが実際に強みとしている「ビジネス」「データサイエンス(統計)」「エンジニアリング」の視点が必要であるとお話されました。しかし、これらの領域をすべて網羅している人材というのは、現状そう多くはありません。そのため、組織全体でこの3つの領域をカバーするのが業界全体での流れとなっていると述べられていました。

ここで気を付けなくてはいけないポイントは、それぞれの領域のプロフェッショナルを集めるだけではダメだということ。「お互いがお互いを理解し合わないことによって、データ活用という仕事が成り立たなくなってしまうことはありがち」と安部氏は述べます。これを「無理解の壁」と表現し、警鐘を鳴らしました。

「これからの時代、データ活用の世界でAIエンジニアとして生きていくには、『エンジニアリング』をベースのスキルとしつつも、他の領域への理解が必要である」と安部氏は続けます。すべてのスキルを伸ばしていくのは難しいかも……と思われる方は、今持っているものに加え、あと1つ伸ばすだけでも良いとのこと。実際に、「エンジニアリング」と他の知識を掛け合わせるとどのような化学反応が起こるのか、説明してくださいました。

◆エンジニアリング×ビジネス

「エンジニアリングは、『解決の方法を提供すること』が主ですが、ある程度ビジネスを理解することによって、『ビジネス上の課題を解くための実装』ができるようになります。エンジニアリングだけでものを作っても、何のためのものを作っているのかがよくわからない……というのが『無理解の壁』で起こりがちな問題ですが、ビジネスを理解することできちんと課題を解決できるものづくりができるようになります。一方で、この二つの知識だけだとデータ活用の根拠が弱いので、そういった点ではデータサイエンスの人の助けが必要にはなってきます」

◆エンジニアリング×データサイエンス

数字を根拠に課題解決の方法を考えることができる人材ですね。これらのスキルを持っている人は、自身で課題の設定を行うことはなかなか難しいかもしれませんが、ビジネスサイドの人から課題を与えられることでスマートな解き方を提案することができます。『ビジネス』を得意とする人と協力することでデータ活用を効率的に進めることができるタイプですね」

「もちろん、全てのスキルを持ち合わせている人は『最強』と言えますし、そこを目指すのが理想的ではありますが、お互いの足りないところを補い合い、『最強の組織』を作り上げるのが組織でデータ活用を進めていく上で大切なこと」と安部氏は続けます。

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「組織でどう振る舞うかを考える上で一番大切なことは、3つのスキルのうち何を自分が持っていて、何を相手が持っているかを意識すること。皆さんの企業でどのようなビジネスをやっていて、どういうエンジニアリングが必要で……という部分はそれぞれかと思いますが、自身のスキルを価値として高めたいということであれば、他の人たちが必要としているスキルを強くしていくのが良いと思います。1つのスキルだけを強くしていっても、先ほど言ったように『無理解の壁』ができてしまうので、やはりビジネスやデータサイエンスなど他の領域についてもお互いに理解し合う意識やコミュニケーション力が大事になってくるかなとは思います」

一緒に事業や開発を進めていくパートナーと互いを補完し合える関係を築き、スキルを身につけることで市場価値を上げていってくださいと、安部氏はエールを送りました。

データ活用人材の需要バブルは崩壊する?「特化型」になりすぎず、新しいものを生み出す視点を持とう

トークセッションでは、弊社の高坂から安部氏へ、皆様も感じているであろう疑問点や質問をいくつか伺いました。

Q. AI時代が到来すると言われているが、今から何をすればAI人材になれるか?また、目指すべき場所は?

A. 自分のベースとなるものは3つの領域(エンジニアリング、統計、サイエンス)の中のどれにあたるのかを考え、そのスキルを基にどちらに行くか、どれを伸ばしたいかを意識し、行動していくことで成長に繋げていけるかなと思います。

Q. ぶっちゃけCTOの目線からどんな人がほしい?スキル、人柄、マインドなど……

A. エンジニアの方は割と1つのスキル特化型の人が多いと思いますが、DATUM STUDIOに関して言えば、基本的にはお客様の仕事をするのがビジネスなので、「無理解の壁」ができてしまうとどうしても仕事にならないというところがありますね。なので、先ほどの3つの中の何がベースでも構いませんが、他の領域への理解があって、さらに他のメンバーたちがどのようなことをやりたいのかを常に意識できる人が良いなと思います。

もちろん、エンジニアリングはすごく大事で、特にお客様のプロジェクトにおいて数カ月でアウトプットを出さなきゃいけないという時に、エンジニアリングの力があると手が速く、すぐにアウトプットを出せるという利点があります。実際に手を動かせるエンジニアの方はすごく強みになるかなと思いますね。

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Q. データサイエンティスト人材はバブルのように需要が高まっているが、CTOの目線からみてこれは長く続くか?

A. 「バブル」に関していえば、もうすぐ終焉を迎えるのかなとは思います。現状、データ活用に関しては業種・業態によって腰の重さは変わってくるとは思うのですが、特に製造業は今まで腰が重かった印象がありますが、需要が増えてきたこともあって、手を出すようになってきていますね。今はまだ事例を重ねている段階ではありますが、あらゆる業種・業態において、データ活用というものが当たり前という世界になりつつあります。この時期にうまく事例を作ることができるとその分野においてはデータ活用が当たり前、という世界観になるので、そうなってくると今後もデータサイエンティスト人材の需要は継続されていくかなと思います。

なかなか成功事例を作れないと後ろ向きになってしまう……というお客様も結構いらっしゃるので、今のうちに優れた人がこの業界に入ってきてくれて、どんどん良い事例を作っていけると需要が高まっていくのではないかなと……今が正念場かなという気はしています。

Q. エンジニアの仕事すらもAIにとって代わられることはあるのか?

A. 冒頭でも述べましたが、現状の機械学習は結局データという経験を基にしか何かすることができないので、何か新しいことを見出すというのは、まだ難しいんですね。これまでエンジニアが積み重ねてきた知見を再現するという意味だと、AIにとって代わられてしまう可能性は十分にあると思っています。ですが、何か新しいことをやりたいとなると、AIはどうしてもそういった領域にはまだ力を出せないので、私としてはAIにとって代わられる仕事と、代わられない仕事があるなと思いますね。仕様がある程度固まっていて、その仕様から何かプログラムを生成しましょう、といったことは現実的にはできなくはないんじゃないかなという気はしています。ただ、どういった仕様でビジネスを良くしていきましょうか、ITを作っていきましょうかといった新しいことを考えるのは、まだAIには置き換えられないでしょう。

安部氏には、AI人材を取り巻く現状から未来のことまで、幅広く答えていただきました。

* * *

AIの出現により、私たちの仕事には大きな変革が生まれると言われています。エンジニアの仕事をも奪われる可能性があると言われるとつい脅威と感じてしまいますが、まずはAIを知ること、そしてどの領域にいけば自身は淘汰されず生き残っていけるのかを考えることが、今後のキャリアを考える上で絶対的に必要になってきます。

「ビジネス」「データサイエンス(統計)」「エンジニアリング」――3つの領域のどこに軸足を置くか、残りの2つのどちらの力を伸ばしていくか。一度ゆっくりと見つめ返してみてはいかがでしょうか?こちらの講演が、そんなきっかけになれば幸いです。

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ご来場いただいた皆様、そしてご登壇いただいたDATUM STUDIOの安部氏、この度は誠にありがとうございました。

DATUM STUDIOには、「これから求められるAI人材」についてイベント後にさらにお話を伺っております。イベントの内容をさらに深堀りしたインタビュー記事を、後日改めて配信しますので、ぜひ併せてチェックしてみてください。

登壇者プロフィール

安部 晃生(あべ・こうせい)
DATUM STUDIO株式会社 CTO/情報システム部部長

安部晃生さんプロフィール写真

DATUM STUDIO(デイタム スタジオ)は、データを事業に役立てたいすべての企業を、人工知能の活用を提案することで支援する会社です。クライアントの状況やニーズに合わせて人工知能のカスタマイズ、Webクローラの作成、分析基盤の構築、コンサルティングなどを行っています。とくに高度な技術力を活かした、人工知能のカスタマイズ開発に強みがあります。講演者は、人工知能のための機械学習モデルの作成からシステム化までを一貫してお客様を支援してきました。また、データ活用に関するコンサルティングや社内外の教育・セミナーといった幅広い範囲で案件を担当してきました。最近では社内システムの企画運用や情報セキュリティに関する策定を行いながら、機械学習を活用したプロジェクトの社内標準化などを行っています。
DATUM STUDIO株式会社

高坂 将大(こうさか・しょうた)
株式会社パソナ パソナキャリアカンパニー 人材紹介事業部門 マーケティングチーム

高坂将大プロフィール写真

パソナキャリアに入社後、IT・Web領域のキャリアアドバイザーを2年間担当。特に機械学習経験者、未経験からAI分野にチャレンジしたい方の転職支援に強みがあり、Web系ベンチャー、大手SI・メーカー、その他事業会社等への支援実績有り。現在ではマーケティングチームにてWebマーケティングの企画・運用に従事。また大学時代には、遺伝的アルゴリズムに関する研究に携わっていた経験もあり、社内のAI導入PJTの担当を担い、転職者と企業の理想的なマッチングの仕組みを構築中。